資料調査報告(No.12) : 2014年6月発行「フランス人の見た幕末・明治初期の和船」

No.13 日本の櫓 1868年 大阪の川で計測

日本人や中国人は櫓櫂類を櫂(オ-ル)として漕ぐよりも、むしろ()として使用しており、その機構は極めて優れている。

彼等の櫓の長さは6mで、柄(櫓腕(ろうで))は1.6m、幅0.3mのブレード(櫓羽(ろば))は2m水没する。 櫓腕の端部が櫓羽の延長線から0.3m離れる角度になる様に設定してある。 その結果として、櫓は自ずと作動に必要な角度をとる。 水没する櫓羽の傾斜は甲板に取付けられた紐(早緒(はやお))によって維持される。 櫓羽に付けた台座に明けた穴(入れ子(いれこ))を船尾の木製のピン(櫓杭(ろぐい))に嵌めて安定的に支えることにより、櫓の角度の動きは自由になる。 その結果として摩擦は少なく、櫓腕の押し方、引き方ともに推進力が得られ、櫂の漕法の様なエネルギー・ロスを生じない。

力学的観点からして、日本の櫓は我々(西洋)の櫂(オール)よりも人間の筋力を極めて有効に利用している、即ち、漕ぎ手は楽な姿勢で櫓を押し引きするのみで、櫓羽は自動的に最適の角度をとる機構となっている。 日本に於ける櫓のサイズは小型船でも殆ど変らず、また、一本の櫓が二人を超える漕ぎ手で漕がれることはない。

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