資料調査報告(No.12) : 2014年6月発行「フランス人の見た幕末・明治初期の和船」

まえがき

この報告は次のような経緯で行われた調査活動の成果に関わるものである。

「デジタル造船資料館」 の 「投稿」 の中に2010年1月に藤村洋が投稿した 「フランス海軍士官の記録した ”日本の古い船”」 という ある寄贈品の紹介がある。
これは19世紀に活躍したフランスの海軍士官Armand Parisが 1868年に日本で観察した和船について記録した報告書のコピーに関する逸話を述べたものであり、併せてフランス語で書かれたその詳細な報告書コピーを紹介した。

この 「デジタル造船資料館」 の画像を見られた焼津在住の海事代理士 小林宏行氏から 『このフランス語を是非日本語に訳して和船についての啓蒙の参考にしたい』 というお申し出が当保存委員会に寄せられた。 これに対し当委員会から必要なコピーをお送りした。 今年(2014年)3月初め小林氏から 『一応翻訳が出来たが、専門的なところが良くわからないので見て欲しい』 というお手紙と資料が送られてきた。 読みにくい筆記体の資料を活字体に直されたうえで日本語に訳した労作であった。

これを受けて保存委員会のメンバーの中でフランス語の読める石津康二委員と和船の研究に詳しい小嶋良一委員とが検討作業を担当することになり、専門用語についての適訳の検討、図面の中に書かれている A.Parisの表現による和船の部材などの名称に当時の日本で使われていた名前を添え書きすることなど専門的な立場での調査・追記などを行った。

さらにこの A.Paris の報告が含まれている彼の父 F.E. PARISの編集した”Souvenirs de Marine”など、背景に関する調査、また当時の西洋型の船と和船の比較などの参考資料の追加などの関連作業を行って一応の締めくくりの報告をまとめた。 それをここに掲載し、多くの方々に当時の日本の船、すなわち和船と呼ばれる船についての理解を深めて頂きたいと願っている。 併せて幕末・維新の混乱の環境の中で、異国である日本の船をここまで詳しく調査し、丁寧な報告書を纏め上げたフランスの人たちのレベルの高さと辛抱強い努力についても知って頂きたいと願っている。

この調査に当たって使用したOriginal Documentsは

  1. [1] “Treasures of the Musée national de la Marine” パリ海事博物館ガイドブック
  2. [2] “Souvenirs de Marine Conserves”(printed copy)

であるが、[2]については原典が不明であった。

しかし、今回の調査に依れば多分グルノーブル版の” Souvenirs de Marine”の復刻版であると思われる。参考資料については個々に出典を記してある。

(造船資料保存委員会)

ページの一番上へ